「テオブロマ」土屋公二が案内するとっておきのショコラティエとお菓子たち [単行本] / 武田ランダムハウスジャパン (刊)日本のチョコレートブランド・テオブロマの
シェフ・土屋公二さんがフランス・ベルギーのショコラティエにインタビューした記事を集めた
「テオブロマ」土屋公二が案内するとっておきのショコラティエとお菓子たちを読みました。
土屋公二さんは度々メディアに出られていて、気さくな人柄のためフランス修行時代の人脈だけでなく初対面のショコラティエとも熱いチョコレート談義ができるのでショコラティエとのインタビュアーとしてはいい人材と思います。
登場されているショコラティエのほとんどが
新宿伊勢丹にて毎年1月末に開催される
チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」
に出店している方々です。
読んで意外だったのが東京にも出店している
ラ・メゾン・デュ・ショコラLa Maison du Chocolatの
ロベール・ランクスさんが菓子業界に入った1950年代にはまだ
フランスのチョコレートは
スイスや
ベルギーほど盛んではなかったということです。 その後、
ランクスさんが1977年に
ラ・メゾン・デュ・ショコラを立ち上げてそれに続くショコラティエの努力により今のフランスの高級チョコレートを築きあげたようです。
フランスの取材では個人経営のショコラティエが主だったことがありますが、パリ以外の地方在住のショコラティエが少なくなく、彼らの共通したコメントは
「故郷を離れたくない。」「事業の規模を拡大したくない。」「自分らしさを守りたい」と無理をせずに今の生活を維持したいフランス人の国民性か?個人経営者ならではのコメントが目につきました。
新宿伊勢丹に出店しているChristine Ferber クリスティーヌ・フェルベールさんは
「人はよく才能が大事と言うけど、それは違う。才能よりも、ふさわしい環境に身をおくこと。そして、そこで努力することが大切なの」とコメントしています。
創作するのにふさわしい環境というのも大事というのもなるほどと思いました。
ベルギーでは
Godivaゴディバや
Neuhausノイハウスといった大手の取材があったためかと思いますが、フランスのショコラティエとは対象的に国外での事業拡大に積極的なことを感じさせました。 ベルギーの市場規模ということもあるのでしょうが。
一代で世界的な高級チョコレートブランドを立ち上げた
Pierre Marcoliniピエールマルコリーニさんは
「祖父の代にイタリアから移住してきました。私はこの国で生まれ育った3世ですがベルギー人という気持ちではなくヨーロッパのショコラティエとして仕事をしたいと思います。人種や文明を超えて、一番おいしいと言わせるのが私の目標です。」とコメントされています。
グローバリズムが生んだショコラティエと思わせるコメントです。
フランス人ショコラティエはそれぞれが勝手に創作しているような気がしますが、そうではないようです。
Patisserie FRESSONのオーナーシェフ・
フランク・フレッソンさんは
「短期間の研修をいくつもしたよ。一緒に働いた人たちとのエシャンジュ(意見交換、交流)が思い出だね。フランスでは、そういうエシャンジュが活発でね。例えばレシピを思いついた人が、誰にも話さず、自分の頭の中にだけ留めておいたら、そこから発展することはないけれど、同僚とアイデアを共有したとたん、別なものに生まれ変わっていくんだ。」とコメントしています。
事実、
「サロン・デュ・ショコラ」では
ショコラティエの皆さんが、時々出店から離れて他のショコラティエと親しそうに話をしているのが結構、目につきました。 海外での事業というより同窓会のような印象も持ちました。
交流しつつ、お互い切磋琢磨しているのがショコラティエのようです。この本では取材の都合からか?フランスのパリからフランス東部、ベルギーのショコラティエが多いですが、畜産業が盛んで乳製品が名高いスイスやヨーロッパ各地にもっとたくさんのショコラティエがいると思います。
チョコレートの世界も奥が深いようです。